昼休みが終わる前に。
聞いた話によると、転校先の梢田中学には一学年一クラスしかなく、自分を含めて二年生の生徒は全部でたったの十六人。
それもその全員が、小学校からの持ち上がり。
もう人間関係は完全に出来上がっていて、自分の居場所はどこにもないだろうな。
そう思いながら、新しい制服に袖を通した。
どのみち高校はみんなバラバラになる。この人たちと過ごすのもたった二年。
薄っぺらい友情も思い出もいらない。いつもみたいに存在感を消して生活しよう。
そんな冷めきった気持ちで、2年1組の教壇に立った。
「こちらが東京の中学から転校してきた白石凛々子さんです」
「よろしくお願いします」
自分でも聞き取れないような小さな声で言って、私は頭を下げた。
次の瞬間、盛大な拍手が起こった。
「それでは一限目は、白石さんの歓迎会にします。みんな自己紹介したり、学校を案内してあげたりしてね」
担任の先生がそう言ったのを合図に、みんなが一斉に私の元へ駆け寄ってきた。