昼休みが終わる前に。
「リリ」
唯人は修学旅行のしおりを両手に持ち、表紙をまっすぐ私に見せた。
「俺たちは死なない。絶対に、死なない」
みんなも自分のしおりを高く掲げてうなずいた。
キーンコーンカーンコーン……
そのとき、チャイムが鳴り始めた。
午後1時。時計から光が降り注ぎ、教室を真っ白な光で包み込んだ。みんなの声が遠ざかっていく。
未来に戻される!
私は咄嗟に声を張り上げた。
「みんな、今日のこと忘れないで! 修学旅行に行かないで!」
声が静寂に呑み込まれ、ほとんど耳に届かない。それでも私は、忘れないで、行かないで、と繰り返し叫び続けた。
次の瞬間、ぐん、と身体がものすごい力で引っ張られるような感覚に襲われた。