昼休みが終わる前に。
「私、凛々子さんのことが心配だわ。みんなとの思い出の場所がなくなっちゃうことがショックなあまり、幻覚を見たり、幻聴を聴くようになって、このまま現実と幻覚との区別がつかなくなってしまったらどうしようって」
先生は眉を下げ、本当に心配そうに言った。
“幻覚”という単語が、私の胸の何かを刺激した。
私は確かにみんなに会った。交わした会話も、触れたぬくもりも、全部本物だ。
「違います。幻覚なんかじゃありません」
私はムキになって言い返した。
「この現象が最初に起きたのは三日前でした。それで……」
一度話し始めると、せきが切れたようになった。
タイムリープ先の日付が修学旅行の九日前から始まり、こちらが一日経つと、向こうの日付も同じように一日進んでいること。
教室から出る、または昼休み終了のチャイムが鳴ると、未来に戻ってきてしまうこと。
一度未来に戻ってきてしまうと、その日はもうタイムリープが起こらないこと。
翌日になると、全員の記憶がリセットされてしまっていること。
先生に口を挟む隙を与えずに、全部話した。そして話し終えてから、ふと、あることに気がついた。