昼休みが終わる前に。


ふと、唯人の机の引き出しの中に修学旅行のしおりが入っているのが見えた。


私は手を伸ばして冊子を引っ張り出した。やはりそこにも何も書かれていない。


リセットされるのは記憶だけじゃなかった。起きた出来事すべてがリセットされてしまうんだ。


今まで過去を変えようと必死になっていたけど、そんな方法、初めからなかったんじゃないか。


そう思った途端、自分の中で何かが急速に冷めていくのを感じた。


そこにほんのわずかでも可能性があるなら、きっと死に物狂いでしがみついていた。だけどそこには何もなかった。すがすがしいほど何もなかった。




「……わかった。唯人が忘れてることが何なのか、教える」

「本当に?」

「うん。でも覚悟して聞いてね」


唯人がごくりと唾を飲むのがわかった。私は手のひらで涙を拭いながら立ち上がった。


「修学旅行の日、私以外の全員がバスの事故に巻き込まれて死んじゃうの」

「えっ……?」



< 95 / 233 >

この作品をシェア

pagetop