狼に食べられた如来様。
あゝ、美しき如来よ
永久堂


周辺は濃い霧で覆われていて、開かずの間とも呼ばれている。


野暮用で立ち寄った際に、奉られてある女神に出逢った。

璽寓亞嶬という。



その神に、惚れた。



顔綺麗すぎるし、なんか凄い力持ってるらしいしで、ベタ惚れ。

で、亞嶬に付きまとうことにした。


「亞嶬ー」

「...また貴方ですか」

思い切り嫌な顔をした彼女だったけれど、またそれも可愛い。

「どかどかと勝手に入って来て、一体何なんですか」

「亞嶬のこと、好き」

「は?」

「好きって言ってんの」


唐突な告白に、顔色一つ変えず、は?と返答できる彼女は凄い。

「いやいや。貴方狼でしょう」

「がっつり狼ってわけじゃないよ。俺は狼男」

「何が違うんですか」

興味を持ってくれたらしい彼女は、可愛らしい声で聞いてくる。それが単純に嬉しかった。だから俺は答えた。

「狼は血と肉に飢えた獣。狼男は人間と狼の血が入り混じった正直者」

「ハーフなんですね、貴方」

「だから、俺のこと好きになって?」

「だからの意味が分かりません」

言い放ったら、亞嶬は奥に行ってしまった。

もう、素直じゃないんだから。

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