狼に食べられた如来様。
「な、な、な、ななな何を...?!さ、触らないで下さい!!!」

やってしまった。
異常な反応をしてしまった。

「え」

それこそ、最初はキョトンとしていた狼男だったが、状況を理解したのか、みるみる内に顔が晴れていった。

「そっか、そっか、そういうことなんだねぇ~」

そう言ったときには、既に、私の調子は戻っていた。が、私はスイッチを入れ切ってしまったらしい。

「何する気、ですか」

神に似合わぬ、気弱な声を出してしまう。それも全部、この、ニヤケが止まらないとでも言わんげな顔の、極悪非道狼のせいだ。

その極悪非道狼は、顔を覗き込んでくる。
悔しいけれど、端整な顔立ちだ。

「ねえ亞嶬。俺のこと名前で呼んでよ」

「え?」

「愛し合ってる者って、名前で呼び合うんだよ?」

「いや、愛し合ってませんし、その事実が無い限り私が名前で呼ぶ意味はないお思うんですが」

言い切ると、狼男は、顔を覗き込むのを止め、華奢な手で私の片頬を包んだ。


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