狼に食べられた如来様。
「ひゃっ」

ビクリ、と、肩が揺れる。

「可愛い声、出るじゃん。仏頂面も可愛いけど、こっちのがもっと可愛い」

顔、絶対赤い。
悔しい。こんな邪念の塊に、弄ばれるなんて。

目尻に涙が浮かぶ。
そんな私とは裏腹に、妖しく微笑む。

「ちょ.......っと...や、やめてくださ...」

「名前、呼んで」

ゾクゾクと、背中を何かが伝う。

「な、まえとか...知り....ません...っ」

「...ほんとに?」

そう言った後に、空いていたもう片方の手も使い、私の両頬を優しく包み込んだ。

「や...っ!!」

「ほら、正直に」

腰が抜け、座り込んでしまった。

「.................................ほ、逢狼...」

「はい、よく出来ました」

そのまま、狼男...逢狼は、私の額にキスを落とした。





...やっと、解放された。
その思いで、立ち上がった。

そんな私への、逢狼の第一声は

「亞嶬ちゃん、ほんと可愛い。愛してるよ」

殴りそうになった。
神を弄んだ挙句、そのようなことを言うとは。

相変わらず、私の調子の戻りは早い。

だから、こんな返しができる。

「仏様の世界へお送りしましょうか」



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