狼に食べられた如来様。
「ああ、もう。可愛い。強がり過ぎ。もっかいキスし」

「仕事があるのでもう行きますね」

足早にその場を去ろうとし、待ってと言われた。

「......なんですか」

思い切り睨みつける。

「ごめんって。さっきみたいなこと、もうあまりしないから」

「あまり、じゃなくて、絶対にしないで下さい」

「ま、それは置いといてさ。弟子ちゃんと話してた、北の妖怪の件。あれ、俺んとこにも話来てたんだ」

『俺んとこ』
その単語が、妙に気になった。

「あなた__逢狼さんは、何か仕事してましたっけ」

「仕事っていうか、狼族の若頭。狼男なんだけどね。父が狼だから、後継者、みたいな」

確か以前、母が人間とか言っていたかな...。

「で、その件がどうしたんです」

「単刀直入に言うよ。亞嶬、俺と一緒に闘え」

「如来様に向かって何を言いますかあなたは」

失礼極まりないな、この人。前提、人じゃなかった。

「いや、かっこいいかなって」

「礼儀の”れ”の字にも縁がないのでしょうね、きっと」







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