俺にもっと溺れろよ。




────ドサッ。





驚きで持っていた、袋を落としてしまう。



幸いにも、朔先輩はわたしが居ることには気づいてないみたい。



本当に、気づいてなくてよかった。



だって、今わたし。





「......ううっ、なん、で......」





誰にも見せられないぐらい泣いてるもん。


あれ。

......わたし、なにを買いに戻ったんだっけ。



理解が追いつかなすぎて、何も考えられなくなる。


こんなことになるなら、引き返さなければ良かった。


コンビニじゃなくて、ファミレスを選んでれば良かった。


もっと、暗くなってから出てれば......。



今さら、そんなこと思ったって遅い。


だって、朔先輩が女の人と居たのは事実で、きっと彼女。


凄く、親しげそうだった。


少し離れたところからでも分かった。


わたしなんかより、綺麗でとってもお似合いで......。


なんか、1人であれこれ考えてた自分が恥ずかいなぁ。



......早くここから立ち去らないと。



落とした袋を拾って、そこからは無我夢中に家まで走った。



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