俺にもっと溺れろよ。




どう返したらいいか分からないわたしは、目を逸らそうと頑張るけど、その目が......。



──わたしを捉えて離さない。



自分が、傷つきたくなくて勝手に避けてたのに......。


それで、わたしが離れたことで朔先輩は、やっとわたしから解放されたと思ったのに......。


......思ったのに。


なんで、そんな表情するんですか。




「......わ、わたし用事あるので、すいません」



......最低だ。

わたしは前の勇気のある自分には戻れない。


結局、この状況に耐えられなくなったわたしは、後ろのドアに体を向ける。


......ごめんなさい。



そう思って、逃げようと思ったけど。




────パシっ。




それは、わたしの手を掴んだ朔先輩によって阻止された。



「だめ。逃がさないよ?」



「え......」



まさか引き止められるとは思ってなかった。


驚いたわたしは思わず振り返ると......。

朔先輩は、さっきとは違い焦ったような怒ったような表情をしていた。



......どうして、そこまでしてわたしに構うんですか。


わたしが、離れた方が朔先輩は楽になるんじゃないんですか......。




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