好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
恥ずかしげもなくこんなことを言う奴が現存するのか。
いや、過去にいた保証もないけれど。
あぶないあぶない。いくら助けられた身と言えど、気をつけなくちゃ。
でも。
「……ありがと」
すきだと言われて悪い気はしない。私も、桜も月もすきだ。
桜は日本なのだと。
「桜木……?」
「私の苗字だけど?」
アパートの一室。そう名の書かれた部屋の前で黎は足を停めた。ドンピシャで私の部屋だった。
でも、本当にどんなにおいがしているんだろう。
抽象的な言い方だったからはっきりとはわからなかった。
「親いないって言ってたけど、ここで降ろすか?」
「警察を呼ぶべき事態になる?」
「ならねーよ」
言い、黎はドアを開けた。
「真紅、歩けるか?」
「歩く」
黎の腕から降りて、靴を脱ごうとしたときに、
「……ぁれ」