好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
side黎
「じじいー」
「なんじゃクソガキ」
俺とじじい――小埜古人――は、大体そんな呼び方だ。お互い。
「桜木真紅って知ってるか?」
「真紅嬢(まこじょう)なら存じ上げておるが……何故お前が真紅嬢を?」
真紅嬢? なんでじじいが――小埜の当主が、真紅をそんな呼び方をする?
「なんで真紅のこと知ってんだ?」
「主家に連なるお一人だぞ。知らぬわけがあるまいて」
「……主家?」
「影小路の直系長姫にあたられるお方だ。まあ、母君である紅亜嬢が廃嫡(はいちゃく)されておるから、正しくそうとは言えんかもしれんが……黎?」
「………」
俺、思考停止。