好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
ふと、ママが枕元の小さなカゴに目をやった。
そこで丸くなっているのはるうちゃん――黒藤さんが念のため、と私の傍に置いてくれた黒藤さんの式だ。
「可愛い小鳥ね。怪我でもしてたの?」
「あ、うん――」
るうちゃんのこと、ママに正直に話していいのかな……。
「そ、それよりママの話って?」
今は誤魔化すしかないと判断した。
ママが黒藤さんのこと――そもそも影小路っていう家のこと、知ってるかわからないから……。
「真紅ちゃんには、今まで淋しい思いをさせてごめん。一人にするなんて、母親失格よね」
ママは、身のうちのどこかが痛いように顔を歪めた。
私はゆうるり首を横に振った。
「ううん……」
「……ママはね、ずっと一人で暮らしていたの」
「え? 彼氏、いるって……」
私が不審に思ったことは、当たっていたのか。
「いないわ、そんなの。……ママは、真紅ちゃんの傍にいると、真紅ちゃんを危ない目に遭わせてしまうようなものなの。だから……真紅ちゃんから、離れていないといけなかった」