好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
side黎
「美愛(みあ)」
父は母をそう呼んでいた。
優しい声。母はそれに、微笑みで応える。
異国の娘であった母。本名は『ミーア』というらしい。
日本で生きていくために、父がそれに漢字をあてた。
古めかしい家、味方は父だけ。
俺の吸血鬼性は、母から継いだものだった。
吸血鬼と言っても、俺の血は半分の混ざりもの。
幼い頃は血なんか吸わなくても、人間と変わらない食生活で生きて来られた。
――時が来るまでは。
「こんなガキみたいな奴の血がうまいなんてなあ、自分」
やはり、俺の本質は鬼人(きじん)ではなく吸血鬼だったか。