好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
side涙雨
少し寝ておきなさいという紅亜嬢の提案に、真紅嬢は大人しく従った。
本当に眠かったのだろうと、枕元のカゴで丸くなった涙雨は考えた。
今日は土曜日で、学校とやらは休み、真紅嬢は特にぶかつというものはやっていないということだ。
黒の若君や白の姫君は陰陽師という性質上、夜に強いが、真紅嬢は普通の人間として生きてきたのだ。
……縁(ゆかり)殿……仕組みおったな。
真紅嬢と黎明の子どもの予期せぬ再会。
仕組んだのは、黒の若君の式の一である縁殿だ。
縁殿はその名からわかるように、縁(えにし)の妖異だ。
人と人との『えにし』を繋ぐ妖異。あるいは、絶つ妖異。
真紅嬢と黎明の子どもの再会は、縁殿の――もっと言えば主である黒の若君の企みだろう。