好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
「俺の父の名だ。今はいない。母上はよく、永遠(とわ)の恋人だと言っていた」
「………」
永遠の恋人。
「……映ったな。真紅、見えるか?」
黒藤さんに問われて、沈みかけていた意識がはっとする。
黒藤さんが示した水鏡を、黒藤さんとは反対側から覗き込む。
そこには、ママと同じ顔の女性が――祭壇? のようなところに横たわっていた。この人が……
「紅緒様……」
ふと口をついたのはそんな呼び方だった。
今まで誰かを『様』扱いなんてしたことないし、そういう家風とは縁遠かったのに、この女性はそう呼ぶ対象な気がした。