好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
「では――真紅ちゃんはどうなるの? 紅緒が目覚めたら……」
「母上の目覚めとともに真紅の力への封じは解かれるという術です。真紅の力は一気に戻るでしょう。封じられていたものに桜木の血があれば効力も目覚め、その反動は黎のところへ行く。退鬼の力が黎の身を駆ける。紅亜様は申し訳ありませんが、見鬼でない者を涙雨の力で送ることは出来ない。真紅と先に病院へ行っておりますので、縁とともにいらしてください。――涙雨」
黒藤さんが式の名を呼ぶと、玄関先に人よりも大きな、それこそ鳳凰のような金色の鳥が現れた。
「――るうちゃん?」
私はただ、その姿に驚きの目を見開く。
『若君、お嬢。涙雨はばっちしおうけいじゃ。涙雨の翼に寄れ。一息にびょういんまでゆくぞ』
そう、るうちゃんの声が聞こえて、鳥は翼を広げた。
黒藤さんが金色の鳥の羽に手を載せる。
「涙雨は時空を駆ける妖異だ。一秒後には病院にいる」