好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】


るうちゃんの翼に掴まって、その周りを突風が巻いたかと思うと、すぐに『真紅嬢よ』とるうちゃんの声がした。

風の勢いで瞑った目を開ければ、そこはいつか、黎と話した病院の中庭だった。

「ほんとに来ちゃっ……」

――ドクンッ

自分の呟きが終わる前に、心臓が一際大きく脈打った。

思わず胸の辺りを押さえる。同時に、真昼を告げるまちの放送の鐘が鳴った。

――正午。私が生まれた、ちょうど一日前だ。

「――――⁉」

全身をつんざくように襲って来たあまりの痛みに、今度は両手で頭を押さえた。

頭の中を風が駆け抜ける。

何かが思い起こされていく。

記憶、断片、集まって『真紅』になっていく。

――桜木真紅は、ここにいる。

< 365 / 413 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop