好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
「どうした?」
「……ちょっと、頭の中こんがらがってて……考えるから、時間ちょうだい?」
頭の中? 何か不安なこと……真紅を襲ったモノのことだろうか。
「考えなくていい。今思ってることを言ってくれれば」
今、思っていることを。俺も、真紅と話す傍ら考えていた。あれは――
「全然、知らないから、不安」
? 知らない?
「何を?」
「黎のこと。私を助けてくれたとか、人間じゃないとか、わかったけど……全然知らない人を、すきになることって……あるのかな?」
見上げる真紅の瞳の色に、どきりとした。
色がある瞳。放つ光彩が、虹のように綺麗だ。
そして、音にされた言葉。
「……さあな」