好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
誤魔化すしか、なかった。真紅は真っ直ぐに問うてくれたのに。
「そこは答えてくれなくちゃ」
「真紅の気持ちは真紅にしかわからんだろ」
「……そりゃそうだ。それがね、今ぐるぐるまわってて、整理がつかない」
「………」
真紅は、自分を襲って殺しかけたものを、怖いとか、そういう風には思っていないのか?
死にかけたことは理解しているようだ。
でも、その犯人のことは、原因のことは、一度も口にしていない。
……防衛本能が、口にすることを拒否しているのだろうか。
「……な。真紅は今、俺に反抗出来ないだろ?」
「へ?」
急に変わった話題にか、言葉にか、驚いたように振り仰いできた。
俺は瞳を細める。
「俺の血を容れたから、それが完全に《真紅》のものになるまでは真紅に俺は必要なんだ。例えでも俺が死んだりしたら、一緒に俺の血も死ぬ。死なないために、俺がすることに、しようとすることに抵抗しない。例えば――」
真紅の肩を抱き寄せると、勢いのまま俺の肩口に真紅の額がぶつかった。
「いきなりこんなことされても、抵抗しようとか思わないだろ?」