好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
「………」
男の人はどうしたものかとでも考えているのか、難しい顔をしている。
私は、今は自分の身を護るのに必死だ。なんだか流れとしてはこの男の人に助けられたみたいだけど、状況に頭が追いつかない。
「こっち来い」
「………」
私は返事が出来ない。
じーっと睨んでいると、男の人は何かを諦めたように、ふっと口の端をゆるめて立ち上がり私に歩み寄った。
私はびくりと身体を震わせたけど、咄嗟に動けなかった。まだ目の前がぐらぐらする……。
「元気なのはいいけど、無理はするなよ」
……限界だ。男の人が差し出した腕に、私は倒れこんだ。
「すぐに戻してやるから。……少し待ってろよ」
少しだけ待っていろ。遠のく私の意識に、言葉がかけられた。
「生きろよ」
そして、首筋に牙を当てた。