好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
side黎
背中を張り付けた壁に、自分の脈動が移ってしまったようだ。
今目にした、愛しい子。
「何でここにいんだ……」
ここは紛れもなく病院。しかもかなりの病床数を誇る大病院だ。
「まさか……傷、治らなかったとか……」
いや、あの折の傷は完治させたし、今も調子が悪そうなところはなかった。
「にしても」
何で。
逢わないと決めた子に、逢ってしまうのだろう。
そこにいたのは間違いなく真紅だった。
昨日、気紛れに見つけて本心から助けた子。
真紅に似た長い黒髪を見ただけで心臓が跳ねた。まさか本人ではないだろうと思って、でも真紅だったら……そんなことを思い、書類に顔を伏せ気味に廊下の端を通り抜けた。
真紅は何やら売店の袋を下げて、憂い気な顔をしていた。
……もしかして自分を?