好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
そうではないだろう。
でもあれ――俺が見たところ――真紅を殺しかけていた傷が問題だった。
刃物ではない。
人間によるものではない。
傷にまとわりついていた妖気(ようき)がそれを教えた。
ならば俺たちと同じ、妖異怪異の類(たぐい)か。
……いや、それともどこか違う。完全な妖気ではなく、若干人間の持つ霊力の波動も感じていた。
人間と妖異が混じった存在? そんなのは数多(あまた)といる。
人間を傷つけるだけの妖異怪異は存在しない。
それ相応の理由があって、人間を害する。
それ相応の理由がないと、妖異怪異は人間に危害を加える発想がない。
この世の理(ことわり)のようなものだ。
前提、人間に認知され、存在するのが妖異怪異であるから。