好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
行って来いと目だけで伝える。
直後、やっぱり行くなと思った。
こんな俄然やる気の奴が出て行ったら黎に気づかれる。
「空閑(くが)。行ってくれ」
「御意」
一瞬だけ姿を見せた鎧姿の式に肯き、門叶(とが)に座れと座を示した。
門叶は、若い女性の姿で、浴衣のような衣に薄い領巾(ひれ)が腕を巻いている。
「………ご主人様」
しおれた門叶。
「門叶。耳出とるぞ」
はっと頭を押さえる式を横目にしてから問う。
「門叶。……黎は昨日、どこへ行った?」
「わかりません」
「わからん……? お前、昨日いなかったろう」
「はい。……昨日は気まぐれに吸血鬼の尾行をしていたのですが、ぷつりと気配が途切れてしまいまして……」