好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
side紅亜
「真紅ちゃんを助けた、ねえ……」
帰り道、私――桜木紅亜(さくらぎ くれあ)夜天に呟いた。
真紅ちゃんの暮らすアパートから離れて、独りで暮らしている家へ。
真紅ちゃんに、本当のことは伝えていない。
私には恋人などいない。本当は独り暮らしだ。
年頃の娘を独りで置いておくなんて、自分でも不用心で危ないことだとわかっている。
けれど、私と一緒にいる方が、真紅ちゃんにはずっと危険だった。
真紅ちゃんは何も、知らないから。
教えていないから。
……教えるには、真紅ちゃんは血が濃すぎる……。
そして私は、無能だ。
私は、自分伝いで真紅ちゃんの存在が知られないように、離れることでしか娘を護ってやれない。
「紅亜さん? こんばんはー」