好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
妙に間延びした挨拶がかけられた。
顔をあげれば、真紅ちゃんの隣の部屋に住む子だった。
「舞子(まいこ)ちゃん。こんばんは。今帰り?」
「はい。紅亜さんも、真紅ちゃんのとこですか?」
舞子ちゃんは近くの病院で看護師をしている。
夜勤もあるから滅多に顔を合わせることはなかったけど、舞子ちゃんが学生の頃からお隣で、真紅ちゃんとも仲がいい。
……私は舞子ちゃんにだけ、本当は恋人などいないことを話してある。
お隣さんに、真紅ちゃんに対して見捨てられた子、などと思われるのは嫌だったし、真紅ちゃんの知らない本当を知っている人がいてくれれば、私自身が安心するのもある。
「うん。……海雨ちゃんは、まだ入院してるの?」
海雨ちゃんが入院しているのは、舞子ちゃんの勤務先だ。