好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】

退鬼師である桜木は、今は廃(すた)れているが、歴代には強力な術者がいた。

小路や御門の系譜ではないため、陰陽師とは質を異にする。

「紅亜様を桜木に出したのが問題だったんじゃねえかな……」

黒は夜天を見上げてぼやく。

紅亜様と紅緒様は、本家の双児だった。

小路は、本家筋の人間の中でも、兄弟が多くあれば、最も力の強い者が後継者となってきた。

妹の紅緒様が跡継ぎとなり、紅亜様は桜木の家に養子に出された。

紅亜様に陰陽師としての力がないだけなら、妹が跡継ぎとなっても、小路の今までを考えれば特に問題はない。

だが、紅亜様にはそれだけではない理由があったと聞いている。

「黒。中へ入れ。冷えるだろう」

「ん? いいのか? ……敷地に入った途端矢が飛んでくるとか……」

「ねえよ」

呆れ気味に答えたが、黒の心配もあながち間違いではない。

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