好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】
俺の祖父であり御門の先代・白里(しろさと)じい様は、ある理由から黒が俺に近づくのを嫌がっていた。
じい様は隠居して京都の本邸に移ったのだが、首都にある御門の別邸には、俺のほかにも同居人が何人かいる。
そのうち数人は、じい様が俺の補佐にとつけた一族の者だ。
彼らにとって当主は俺だが、主人はじい様だ。
「お前が来ることはみんなにも話してある。短く終わる話でもないだろ」
黒が今夜、御門別邸を訪れることは、涙雨(るう)という名の黒の式があらかじめ教えてくれていた。
先触れ(さきぶれ)というやつだ。
「そうか……白が自分から俺を招き入れてくれるなんて、俺のよ
「天音―。振り下ろしていーぞ」
「やめろ!」
いつも通りの戯言(たわごと)を言うつもりだったらしい黒の髪を数本斬る勢いで、天音が大鎌を振り下ろし寸止めした。
黒の脳天貫かれるところだった。