好きになった人は吸血鬼でした。-さくらの血契1-【一人称修正ver.】【完】

俺の祖父であり御門の先代・白里(しろさと)じい様は、ある理由から黒が俺に近づくのを嫌がっていた。

じい様は隠居して京都の本邸に移ったのだが、首都にある御門の別邸には、俺のほかにも同居人が何人かいる。

そのうち数人は、じい様が俺の補佐にとつけた一族の者だ。

彼らにとって当主は俺だが、主人はじい様だ。

「お前が来ることはみんなにも話してある。短く終わる話でもないだろ」

黒が今夜、御門別邸を訪れることは、涙雨(るう)という名の黒の式があらかじめ教えてくれていた。

先触れ(さきぶれ)というやつだ。

「そうか……白が自分から俺を招き入れてくれるなんて、俺のよ

「天音―。振り下ろしていーぞ」

「やめろ!」

いつも通りの戯言(たわごと)を言うつもりだったらしい黒の髪を数本斬る勢いで、天音が大鎌を振り下ろし寸止めした。

黒の脳天貫かれるところだった。

< 92 / 413 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop