見上げてごらん、夜空に輝くあの星を
冬休み
観測会が終わってが終わって少し経った頃。世間はクリスマスという名の宗教行事に精を出していた。
「クリスマスってなんだよ...リア充共が騒ぐだけの日やん..神聖なるイエス・キリスト様の誕生日に何をやってるんだ」
慎一がそんな愚痴をポッと吐く。
「言っとくが、イエス・キリストの誕生日って不明らしいぞ」
「そんな情報ほんっっっとにどうでもいいわ...というかとりあえずこの状況をなんとかしてくれや」
クリスマスだと言うことで、俺たちはなぜかショッピングモールに来ていた。なぜかと言うと、春乃と琴吹がクリスマスパーティーをやろうと言い出したので、それの準備を手伝わされているのだ。とは言っても、ただの荷物持ちに無給で雇われているに過ぎない。などという野暮なことは言わないが、周りがカップルだらけで、店の外で男2人で春乃と琴吹をただ待つだけだ。たしかにこれは苦行以外のなにものでもない。
「そうは言ってもな、この状況でできることなんて何もないぞ」
「俺たちはなんて無力なんだ...」
慎一がそんな風にため息をつきながら嘆く。
「そう悲観するなって。側から見たら俺たちも男女のリア充グループだぞ。浮いてはいない.....筈だ」
「その不自然な間が気になるが、まあ何を言っても仕方ないしな。この状況に耐え続けるしかないよな...」
そう哀愁漂う慎一を横目に、店から出てくる影が見えた。
「おまたせ〜ごめんねなんか結局私たちの買い物につき合わせちゃって」
たくさんの荷物をこちらに見せつつ言う。中にはパーティー... には全く関係がない衣服がたんまりと入っていた。
「こういうところに来ると目移りしちゃってさ...」
若干目を伏せつつ言うが、隣の琴吹は全く申し訳なさそうな表情すらない。
だからと言っていつものように悪態をつくわけでもなく、ただ腕を組んで不機嫌さを全身に表しているだけだ。本心はどうだか知らないが。
「本当持たせちゃってごめんね...こういうところに来たらどうしてもそっちに目が行っちゃって...」
(女子はみんなそうなんだろうか...)
「まぁとりあえず目的のものは手に入れたんだろ?なら少し増えたくらいだし問題ないさ。しかももう準備ってほとんどやってくれたんだろ?これくらい朝飯前だって」
パーティーをやる、と言い始めた張本人だから、と飾り付けなど諸々は全てやってくれていたそうなのだ。
そこまで言われたら、行かないわけにもいかず、こうやって手伝いと言う名の荷物持ちを買って出たわけだ。
正直、部活でクリスマスパーティーというものに惹かれたというのも否定できない。慎一もすぐに快諾したのだから、同じような感じなのだろう。慎一は部活をやっていなかったからこういったもの自体初めてなのかもしれない。
「うわぁ....これ本当に居辛いな」
ショッピングモールを出ても、その周りにたくさんのカップルの姿があった。
「そんなこと言っても、俺たちは側から見ればダブルデート中のカップルだぞ」
「くっ...世間の目というものは必ずしも正しく映るものではないということか...」
「目に入る情報だけだと頭が勝手に情報を補完して都合のいいように書き換えるからな。俺たちだってこう見るとカップルだらけだけど、実際は俺たちみたいな状況のやつもいるかもしれないぞ。俺たちだって勝手にそう思ってるだけなんだから」
「涼磨...さっきからお前おかしいぞ...そんなに論理的な感じに言われても困るわ」
確かに今テンションがおかしいのは言えるかもしれない。変に冷静なのだ。これからパーティーだという現実的ではない現実に頭が処理しきれていないということだろうか。
そんなくだらない会話をしているうちにモールの最寄り駅まで辿り着いていた。
今日来たのは湘南ガーデンモールという県内最大級のショッピングモールで、江ノ島鉄道と東日本電鉄を乗り換えて30分と少しといったところにある。
「あっ、もう電車きてるよ!」
春乃が声を上げながら指を指した先には電車が停車しているのが見えた。俺たちは駆け足で階段を駆け下りて電車に乗ると、ドアはすぐに閉まった。
「間一髪だったな...電車は結構あるとはいえ、ここら辺は一本逃したら15分とか平気で待つからな。乗れてよかった」
「そうなのか?首都圏近郊なら10分かからずに次の電車が来るみたいなことを聞いたことがあるけどな」
「それはごく限られた地域だぞ...ここはあんまり人が多く住んでるわけじゃないからな。他県と比べたらそりゃ多いのかもしれんが」
そんな話をしていると、10分もかからずに大船駅に到着した。
そして隣のホームで停車している横須賀線に乗り換える。ここの乗り換えがスムーズだと家の最寄り駅まで30分かからない。
電車に揺られてさらに15分、鎌倉駅に到着した。俺の場合は和田塚から鎌倉乗り換えで行かなくてはならないが、春乃の家は鎌倉駅から歩ける距離にあるうえ、金銭的にもそちらの方が良いのだ。朝の集合は鎌倉駅だったので、俺は一駅分電車で移動することになったが。
「それにしても...坪倉の家って本当に大きいな...」
そうこうしているうちに、もうすぐに家の前まで近づいて来ていた。春乃の後ろに付いてくるだけだったので、思ったよりも早く感じた。
(案外鮮明に覚えているもんだな.....)
周りを見渡すと、その風景は見覚えがあるものだった。周りといっても目下に見える家々や太陽に照らされる海の様子だが。
昔何回も来たはずなのだが、場所は寸分違わず覚えていたことに若干の違和感を感じたりもする。
言っていなかったが、春乃の家は資産家で、事業で成功しているらしい。服飾系のビジネスで成功したとかなんとか。
「俺も何回かきたことあるけど、いつ見ても大きいと思うよ」
「ねえ越知!遅いわよ!」
その声で一斉に頭を上げると、前を歩いていた春乃たちと離れた距離にいた。重い荷物を持つと意識していても自然に目線が下がってくるもので、いつの間にか2人は家の入口まで来ていたのだ。
「おい誰が荷物持ってるのか分かって言ってるのかあいつは...」
「まぁそれが琴吹の良いところでもあるから気にしないでやれよ」
「どこが良いところなのか...お前は少し変わってるよ」
そんな言葉にムッとしながらも、俺たちは目線を上げつつ2人の待つ場所へと向かった。
「クリスマスってなんだよ...リア充共が騒ぐだけの日やん..神聖なるイエス・キリスト様の誕生日に何をやってるんだ」
慎一がそんな愚痴をポッと吐く。
「言っとくが、イエス・キリストの誕生日って不明らしいぞ」
「そんな情報ほんっっっとにどうでもいいわ...というかとりあえずこの状況をなんとかしてくれや」
クリスマスだと言うことで、俺たちはなぜかショッピングモールに来ていた。なぜかと言うと、春乃と琴吹がクリスマスパーティーをやろうと言い出したので、それの準備を手伝わされているのだ。とは言っても、ただの荷物持ちに無給で雇われているに過ぎない。などという野暮なことは言わないが、周りがカップルだらけで、店の外で男2人で春乃と琴吹をただ待つだけだ。たしかにこれは苦行以外のなにものでもない。
「そうは言ってもな、この状況でできることなんて何もないぞ」
「俺たちはなんて無力なんだ...」
慎一がそんな風にため息をつきながら嘆く。
「そう悲観するなって。側から見たら俺たちも男女のリア充グループだぞ。浮いてはいない.....筈だ」
「その不自然な間が気になるが、まあ何を言っても仕方ないしな。この状況に耐え続けるしかないよな...」
そう哀愁漂う慎一を横目に、店から出てくる影が見えた。
「おまたせ〜ごめんねなんか結局私たちの買い物につき合わせちゃって」
たくさんの荷物をこちらに見せつつ言う。中にはパーティー... には全く関係がない衣服がたんまりと入っていた。
「こういうところに来ると目移りしちゃってさ...」
若干目を伏せつつ言うが、隣の琴吹は全く申し訳なさそうな表情すらない。
だからと言っていつものように悪態をつくわけでもなく、ただ腕を組んで不機嫌さを全身に表しているだけだ。本心はどうだか知らないが。
「本当持たせちゃってごめんね...こういうところに来たらどうしてもそっちに目が行っちゃって...」
(女子はみんなそうなんだろうか...)
「まぁとりあえず目的のものは手に入れたんだろ?なら少し増えたくらいだし問題ないさ。しかももう準備ってほとんどやってくれたんだろ?これくらい朝飯前だって」
パーティーをやる、と言い始めた張本人だから、と飾り付けなど諸々は全てやってくれていたそうなのだ。
そこまで言われたら、行かないわけにもいかず、こうやって手伝いと言う名の荷物持ちを買って出たわけだ。
正直、部活でクリスマスパーティーというものに惹かれたというのも否定できない。慎一もすぐに快諾したのだから、同じような感じなのだろう。慎一は部活をやっていなかったからこういったもの自体初めてなのかもしれない。
「うわぁ....これ本当に居辛いな」
ショッピングモールを出ても、その周りにたくさんのカップルの姿があった。
「そんなこと言っても、俺たちは側から見ればダブルデート中のカップルだぞ」
「くっ...世間の目というものは必ずしも正しく映るものではないということか...」
「目に入る情報だけだと頭が勝手に情報を補完して都合のいいように書き換えるからな。俺たちだってこう見るとカップルだらけだけど、実際は俺たちみたいな状況のやつもいるかもしれないぞ。俺たちだって勝手にそう思ってるだけなんだから」
「涼磨...さっきからお前おかしいぞ...そんなに論理的な感じに言われても困るわ」
確かに今テンションがおかしいのは言えるかもしれない。変に冷静なのだ。これからパーティーだという現実的ではない現実に頭が処理しきれていないということだろうか。
そんなくだらない会話をしているうちにモールの最寄り駅まで辿り着いていた。
今日来たのは湘南ガーデンモールという県内最大級のショッピングモールで、江ノ島鉄道と東日本電鉄を乗り換えて30分と少しといったところにある。
「あっ、もう電車きてるよ!」
春乃が声を上げながら指を指した先には電車が停車しているのが見えた。俺たちは駆け足で階段を駆け下りて電車に乗ると、ドアはすぐに閉まった。
「間一髪だったな...電車は結構あるとはいえ、ここら辺は一本逃したら15分とか平気で待つからな。乗れてよかった」
「そうなのか?首都圏近郊なら10分かからずに次の電車が来るみたいなことを聞いたことがあるけどな」
「それはごく限られた地域だぞ...ここはあんまり人が多く住んでるわけじゃないからな。他県と比べたらそりゃ多いのかもしれんが」
そんな話をしていると、10分もかからずに大船駅に到着した。
そして隣のホームで停車している横須賀線に乗り換える。ここの乗り換えがスムーズだと家の最寄り駅まで30分かからない。
電車に揺られてさらに15分、鎌倉駅に到着した。俺の場合は和田塚から鎌倉乗り換えで行かなくてはならないが、春乃の家は鎌倉駅から歩ける距離にあるうえ、金銭的にもそちらの方が良いのだ。朝の集合は鎌倉駅だったので、俺は一駅分電車で移動することになったが。
「それにしても...坪倉の家って本当に大きいな...」
そうこうしているうちに、もうすぐに家の前まで近づいて来ていた。春乃の後ろに付いてくるだけだったので、思ったよりも早く感じた。
(案外鮮明に覚えているもんだな.....)
周りを見渡すと、その風景は見覚えがあるものだった。周りといっても目下に見える家々や太陽に照らされる海の様子だが。
昔何回も来たはずなのだが、場所は寸分違わず覚えていたことに若干の違和感を感じたりもする。
言っていなかったが、春乃の家は資産家で、事業で成功しているらしい。服飾系のビジネスで成功したとかなんとか。
「俺も何回かきたことあるけど、いつ見ても大きいと思うよ」
「ねえ越知!遅いわよ!」
その声で一斉に頭を上げると、前を歩いていた春乃たちと離れた距離にいた。重い荷物を持つと意識していても自然に目線が下がってくるもので、いつの間にか2人は家の入口まで来ていたのだ。
「おい誰が荷物持ってるのか分かって言ってるのかあいつは...」
「まぁそれが琴吹の良いところでもあるから気にしないでやれよ」
「どこが良いところなのか...お前は少し変わってるよ」
そんな言葉にムッとしながらも、俺たちは目線を上げつつ2人の待つ場所へと向かった。