見上げてごらん、夜空に輝くあの星を
鎌倉の地に再び舞い戻ってきた翌朝。冬の朝にも関わらず心地の良い陽気であった。
(もう12月だというのに神さまも気まぐれだな)
ふうっと息を吐いても白い息がでない違和感にかられながら部屋の窓を閉める。その後ろをふと振り返ると、段ボールの山があった。
「げっ、昨日あのまま寝てしまったのか...」
帰って来たその日に片付けようと心の中で意気込んでいたにも関わらず、結局後回しになって何も進捗を生むことはなかったようだ。
1番上に積んである段ボールを足元に下ろし、壁に寄りかかりながら中身を見ようとガムテープを雑に引き剥がす。
開けたその中の物を次々と出していく。中には中学で使っていたグローブなんかもあった。
(これはもう使わないだろうけどな...)
そうは思いながらも捨てきれず、取っておいたものだし今更捨てることはできないと、ベッドの横に置いた棚の上に置いた。
部屋の隅にあった最後の箱は少し小さかったが、これまでの長い作業で疲れていた俺は全くその差に気づかない。ガムテープを剥がすのに手間取るが、それを大して気にすることもなくそのまま開けていく。
何も考えずに開けた自分がバカだった。そう後悔するに時間は要らなかった。
その段ボールに入っていたものは全て“あいつ”との思い出の物だったからだ。
(これがなんであるんだ...!)
これはもう思い出さないようにと押入れの奥に放置していて、引っ越しの時これを捨てておいてと母さんに頼んで置いたはずだ。
(ま、まさか!)
「母さん! この段ボールに入ってるやつ、捨てておいてって言ったじゃないか。なんでここまで持ってきたんだよ!」
「え?確かに捨てておけって言われたけれど、これは小学生のときあなたがあんなに大切にしていたものじゃない 」
「そ、そうだけど!それはもう俺には必要のなくなった物だったんだよ!」
もうこれ以上話していても意味がないと踵を返して部屋へと戻る。目線に嫌でも入ってくるあの段ボール。
とりあえずそれを段ボールから出し、また押入れの奥に入れようと、上から順に出していくその途中。
「こ、これは....」
俺と“あいつ”で描いた星座早見表だった。
小学生の時お小遣いを貯めて一緒に買った星座早見表を、手書きで一生懸命写し、いつでも見れるようにと作った手作りのものだ。
ご丁寧に企業名の“Hoshibeni” という文字まで1つも欠けることなく書いてある。
ああ、これは俺が小学生の時大切にしていた作品だ。間違いない。そう確信するとともに、”あのこと“を思い出し、歯を思い切り食いしばる。そして巡り巡るその感情を抑えられず、あおの「作品」を持ったまま振りかぶってしまう。
「こ、こんな物...!」
その腕はそこから前へと出ることはなかった。
(クソ...なんでこれがまだあるんだよ...!)
苛立つ自分に重ねて苛立ちを覚えながらもなんとか拳を握ったまま大きくため息をつき、顔を上げた。
(あいつ、この街に住んでるんだよな... 高校も一緒だと考えると顔を合わせづらいな...)
胃薬を飲みたいと思いながらキッチンにいくのも面倒だとその葛藤は杞憂に終わる。
(でも俺とあいつはもう関わらないだろうし、あいつも俺と顔を合わせづらいだろう。そんなに深く考える必要はないな....)
鼻からいつもより強く息を出しながら、もので散らかる部屋を見渡し再びため息を吐いた。
「全然作業が進まないな....」
(これ以上篭っていても時間が経るばかりだな。気分転換に外へでも出るか...)
これが涼磨の運命を左右する行動になるとは全く想像にもしないことだったーー
(もう12月だというのに神さまも気まぐれだな)
ふうっと息を吐いても白い息がでない違和感にかられながら部屋の窓を閉める。その後ろをふと振り返ると、段ボールの山があった。
「げっ、昨日あのまま寝てしまったのか...」
帰って来たその日に片付けようと心の中で意気込んでいたにも関わらず、結局後回しになって何も進捗を生むことはなかったようだ。
1番上に積んである段ボールを足元に下ろし、壁に寄りかかりながら中身を見ようとガムテープを雑に引き剥がす。
開けたその中の物を次々と出していく。中には中学で使っていたグローブなんかもあった。
(これはもう使わないだろうけどな...)
そうは思いながらも捨てきれず、取っておいたものだし今更捨てることはできないと、ベッドの横に置いた棚の上に置いた。
部屋の隅にあった最後の箱は少し小さかったが、これまでの長い作業で疲れていた俺は全くその差に気づかない。ガムテープを剥がすのに手間取るが、それを大して気にすることもなくそのまま開けていく。
何も考えずに開けた自分がバカだった。そう後悔するに時間は要らなかった。
その段ボールに入っていたものは全て“あいつ”との思い出の物だったからだ。
(これがなんであるんだ...!)
これはもう思い出さないようにと押入れの奥に放置していて、引っ越しの時これを捨てておいてと母さんに頼んで置いたはずだ。
(ま、まさか!)
「母さん! この段ボールに入ってるやつ、捨てておいてって言ったじゃないか。なんでここまで持ってきたんだよ!」
「え?確かに捨てておけって言われたけれど、これは小学生のときあなたがあんなに大切にしていたものじゃない 」
「そ、そうだけど!それはもう俺には必要のなくなった物だったんだよ!」
もうこれ以上話していても意味がないと踵を返して部屋へと戻る。目線に嫌でも入ってくるあの段ボール。
とりあえずそれを段ボールから出し、また押入れの奥に入れようと、上から順に出していくその途中。
「こ、これは....」
俺と“あいつ”で描いた星座早見表だった。
小学生の時お小遣いを貯めて一緒に買った星座早見表を、手書きで一生懸命写し、いつでも見れるようにと作った手作りのものだ。
ご丁寧に企業名の“Hoshibeni” という文字まで1つも欠けることなく書いてある。
ああ、これは俺が小学生の時大切にしていた作品だ。間違いない。そう確信するとともに、”あのこと“を思い出し、歯を思い切り食いしばる。そして巡り巡るその感情を抑えられず、あおの「作品」を持ったまま振りかぶってしまう。
「こ、こんな物...!」
その腕はそこから前へと出ることはなかった。
(クソ...なんでこれがまだあるんだよ...!)
苛立つ自分に重ねて苛立ちを覚えながらもなんとか拳を握ったまま大きくため息をつき、顔を上げた。
(あいつ、この街に住んでるんだよな... 高校も一緒だと考えると顔を合わせづらいな...)
胃薬を飲みたいと思いながらキッチンにいくのも面倒だとその葛藤は杞憂に終わる。
(でも俺とあいつはもう関わらないだろうし、あいつも俺と顔を合わせづらいだろう。そんなに深く考える必要はないな....)
鼻からいつもより強く息を出しながら、もので散らかる部屋を見渡し再びため息を吐いた。
「全然作業が進まないな....」
(これ以上篭っていても時間が経るばかりだな。気分転換に外へでも出るか...)
これが涼磨の運命を左右する行動になるとは全く想像にもしないことだったーー