見上げてごらん、夜空に輝くあの星を
「うわぁ.....きれい」
ライトアップした瞬間、そんな声が上がった。それは一番最初に来てくれた女の子だったが、食い入るように見つめている。周りも顔は暗く写ってどういう表情かは見て取れないが、息を飲んでいる様子が伝わってくる。
間違いなく掴みとしては大成功だ。しかし、これだけではもちろん終わらない。これはまだ光をつけただけだ。春乃の解説が始まり、今の季節である春の星座から順に説明していく。
春、夏、秋とフィルムを変えながら丁寧に説明をしていく春乃。
「では最後に冬の星座です」
ドームにはすでにもう終わりか...というような落胆の雰囲気が漂い始めていた。個人的にも春乃の説明は非常にわかりやすく、全く星を知らない人でものめり込めるようなものだった。
「冬の星座ですが...ここで一つ例をあげて、神話について話していきたいと思います」
その名残惜しい雰囲気を感じ取ったのかはわからないが、ラストスパートを盛り上げるかのように星座神話の話題へと入っていく。
「その神話とは、かの有名なふたご座のお話です。皆さんは、”ゼウス“という名前を聞いたことはあるでしょうか?」
ふたご座とは絶妙なチョイスだ。ゼウスは、ゲームにもよく出てくる通称全知全能の神のことだ。
興味があまりない男子陣にも一定の食いつきがあるのも予想できるだろうし、盛り上げには最適なのではないだろうか?この中にもふたご座の生徒がいるかもしれない。
「あるところに、2人の兄弟がいました。しかし、2人はゼウスという神の血と人間の王の血筋を引く神の子と人間の子という異質な兄弟でした。2人は他にも兄弟がいたものの、その中でもとりわけ仲のいい兄弟でした」
ここは物語の序章で、この兄弟はここから神話の中盤らしく争いに身を投じていく。
「人間の子であるポルックス。一方で神の子であるカストル。この2人には仲の悪い従姉妹がいました。
ある日、ポルックスとカストルはその従姉妹に牛を騙し取られてしまいます。最初はなんとか抑えて我慢しながらも、レウキッポス王の娘姉妹と結婚式を挙げると、従姉妹はすかさず2人を侮辱しにやってきて式を壊してしまいます。
これに怒った兄弟は牛を奪い返してレウキッポス王に牛を献上してしまいました。逆にこれへの怒りを露わにする従姉妹も負けじと争いが起きてしまうのです」
ここから血みどろの争いが始まってしまう。よく神話にでてくる人間同士の何も生まない争いだ。
「争いの最中、人間の子である”カストル“を従姉妹は殺してしまいます。しかし、神の子であるポルックスは死ぬことはできません。神の子は不死身だったのです。ポルックスは復讐を誓い従姉妹をどちらも殺し、血みどろの争いは幕を閉じます。
しかし、ポルックスは自らの業を許すことができず、命を絶って弟のカストルに命を捧げるよう父のゼウスに頼み込んだのです。この結果、2人は命を半分ずつ分け与えられ、”ふたご座“となりました」
そのまま、プラネタリウムに映るふたご座を指した。星座が2つに分かれており、ポルックスは一等星で、全天体でも最も明るい星の1つに数えられている。カストルはそれに準ずる明るさを放っている。こうして別れているのも星座として“ふたご座”がある所以なのだろうか。
「その”ふたご座“がこれです」
兄弟が寄り添って仲良くしている様子が目に浮かんでくる。この話を聞いた後ならばわかるのではないだろうか。
聞いていた一年生は皆それを見つめながら心に響いたようだった。実物ではなくてもこうやって人を楽しませる魅力があるのがプラネタリウムなのだ。
その中でも神話は多くの種類がありその1つ1つが興味深く思わせる内容だった。そしてナレーターのナレーションによってさらに一層際立つ。
「左が”ポルックス“で、右が”カストル“。この仲のいい兄弟は星座となって今も夜空で輝いているのです。中にはふたご座の人もいるかももしれないので、もし良ければこの話を思い出して星を見上げてみるのもありだと思います。以上でプラネタリウムの上映会を終わります。ご静聴ありがとうございました!」
春乃がお辞儀をした途端、一年生から大きな拍手が上がった。そして、俺たちもそれに続いて大きな拍手送ったのだった。
ライトアップした瞬間、そんな声が上がった。それは一番最初に来てくれた女の子だったが、食い入るように見つめている。周りも顔は暗く写ってどういう表情かは見て取れないが、息を飲んでいる様子が伝わってくる。
間違いなく掴みとしては大成功だ。しかし、これだけではもちろん終わらない。これはまだ光をつけただけだ。春乃の解説が始まり、今の季節である春の星座から順に説明していく。
春、夏、秋とフィルムを変えながら丁寧に説明をしていく春乃。
「では最後に冬の星座です」
ドームにはすでにもう終わりか...というような落胆の雰囲気が漂い始めていた。個人的にも春乃の説明は非常にわかりやすく、全く星を知らない人でものめり込めるようなものだった。
「冬の星座ですが...ここで一つ例をあげて、神話について話していきたいと思います」
その名残惜しい雰囲気を感じ取ったのかはわからないが、ラストスパートを盛り上げるかのように星座神話の話題へと入っていく。
「その神話とは、かの有名なふたご座のお話です。皆さんは、”ゼウス“という名前を聞いたことはあるでしょうか?」
ふたご座とは絶妙なチョイスだ。ゼウスは、ゲームにもよく出てくる通称全知全能の神のことだ。
興味があまりない男子陣にも一定の食いつきがあるのも予想できるだろうし、盛り上げには最適なのではないだろうか?この中にもふたご座の生徒がいるかもしれない。
「あるところに、2人の兄弟がいました。しかし、2人はゼウスという神の血と人間の王の血筋を引く神の子と人間の子という異質な兄弟でした。2人は他にも兄弟がいたものの、その中でもとりわけ仲のいい兄弟でした」
ここは物語の序章で、この兄弟はここから神話の中盤らしく争いに身を投じていく。
「人間の子であるポルックス。一方で神の子であるカストル。この2人には仲の悪い従姉妹がいました。
ある日、ポルックスとカストルはその従姉妹に牛を騙し取られてしまいます。最初はなんとか抑えて我慢しながらも、レウキッポス王の娘姉妹と結婚式を挙げると、従姉妹はすかさず2人を侮辱しにやってきて式を壊してしまいます。
これに怒った兄弟は牛を奪い返してレウキッポス王に牛を献上してしまいました。逆にこれへの怒りを露わにする従姉妹も負けじと争いが起きてしまうのです」
ここから血みどろの争いが始まってしまう。よく神話にでてくる人間同士の何も生まない争いだ。
「争いの最中、人間の子である”カストル“を従姉妹は殺してしまいます。しかし、神の子であるポルックスは死ぬことはできません。神の子は不死身だったのです。ポルックスは復讐を誓い従姉妹をどちらも殺し、血みどろの争いは幕を閉じます。
しかし、ポルックスは自らの業を許すことができず、命を絶って弟のカストルに命を捧げるよう父のゼウスに頼み込んだのです。この結果、2人は命を半分ずつ分け与えられ、”ふたご座“となりました」
そのまま、プラネタリウムに映るふたご座を指した。星座が2つに分かれており、ポルックスは一等星で、全天体でも最も明るい星の1つに数えられている。カストルはそれに準ずる明るさを放っている。こうして別れているのも星座として“ふたご座”がある所以なのだろうか。
「その”ふたご座“がこれです」
兄弟が寄り添って仲良くしている様子が目に浮かんでくる。この話を聞いた後ならばわかるのではないだろうか。
聞いていた一年生は皆それを見つめながら心に響いたようだった。実物ではなくてもこうやって人を楽しませる魅力があるのがプラネタリウムなのだ。
その中でも神話は多くの種類がありその1つ1つが興味深く思わせる内容だった。そしてナレーターのナレーションによってさらに一層際立つ。
「左が”ポルックス“で、右が”カストル“。この仲のいい兄弟は星座となって今も夜空で輝いているのです。中にはふたご座の人もいるかももしれないので、もし良ければこの話を思い出して星を見上げてみるのもありだと思います。以上でプラネタリウムの上映会を終わります。ご静聴ありがとうございました!」
春乃がお辞儀をした途端、一年生から大きな拍手が上がった。そして、俺たちもそれに続いて大きな拍手送ったのだった。