大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
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大王が迎えに来てくれるまで、私は機織りをして過ごした。

ふたつ下の妹のキイトは、とても丁寧に仕事をする。
だから、とても美しい絹ができる。

私はさらにそのふたつ下の妹、マユに絹の織り方を教えた。
マユは物覚えが早いので、春までには献上品の絹を織れるようになるだろう。


そうこうしているうちに、あっという間に時は経ち、外から馬の蹄の音が聞こえた。

私は、思わず、機織り小屋を飛び出した。

視線の先には、馬を駆る大王の凛々しい姿。

大王は、私の目の前まで駆けて来て、手綱を引いた。

「アヤ!」

大王は馬から飛び降りると、家から出てきた兄に手綱を預け、私を抱きしめた。

「アヤ…」

大王は何度も私の名を呼んで、力いっぱい私を抱きしめる。
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