大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「ふふっ
大王、痛いです。
私はちゃんとここにおります。」

私が言うと、

「すまない。」

と言って、腕を緩めてくれた。

「鹿狩り、いかがでした?」

私が問うと、

「俺は5頭、仕留めた。
1頭はここへ置いていこう。」

と大王は得意げに言った。

「アヤは?
ちゃんと話せたか?」

「はい。
ですから、大王にお伝えしたい事があって、
今か今かとお待ちしておりました。」

一瞬、大王の顔が強張った。

「なんだ?」

緊張して尋ねる大王に私は笑顔で言った。

「大王、私は大王をお慕いいたしております。
心より、愛しいと思っております。」
< 106 / 147 >

この作品をシェア

pagetop