大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
大王は、その直後、緩やかに緊張を解いて、代わりに再び、ぎゅうぎゅうと私を抱きしめた。

「ふふっ
大王、痛いです。
少し、緩めてください。」

私が訴えると、大王は慌てて腕を解いた。

そして、代わりに私を横向きに抱き上げた。

「あ、大王!
重いですから!
下ろしてください!」

私は、叫びながら、慌てて大王の首に掴まった。

「重いものか!
アヤ、すぐに香久山へ帰ろう!」

私は、そんな大王がおかしくて、くすくす笑う。

「大王、ここまでも、ひとりで早駆けて
いらっしゃったのでしょう?
お供の方がまだ追いついてませんよ?
大王がお供を振り切って駆けて
いらっしゃっては、皆さんご心配をなさる
でしょう?
途中、何かあったら、どうなさるんです?
もう、大王おひとりの体じゃないんですよ。
大王に万が一の事があれば、私も生きては
おりません。」
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