大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
あれ?
この人…なんかへん?

私は加津彦に違和感を覚えた。

目が泳いでいる?

落ち着かない感じがする。

そう思って見ていると、加津彦は、腰に佩(は)いた太刀に手をかけた。

「っ! 大王!!」

私が大王を庇おうと一歩踏み出すのと、加津彦が太刀を振り上げるのは、ほぼ同時だった。

振り返った大王がとっさに左手で私の手を引いたので、私はその場に転んでしまった。

大王は右手で抜いた太刀で加津彦の太刀を受け止め、刎(は)ね上げると、そのまま右足で加津彦の鳩尾を蹴り倒した。

大王は太刀を加津彦の喉元に突き付け、

「タテ!!」

と兄を呼んだ。

物音を聞きつけた兄は、ちょうど家から出て来るところだった。

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