大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
優しい手つきで、髪を拭かれ、衣を拭かれ、手を握るように拭かれた。

どうして?
さっきから、心臓がトクトク鳴ってる…


私を拭き終わると、男は私を拭いた手拭いで自分の体を拭き始めた。

あ、そうだ…

私は、慌てて新しい手拭いを取り、お礼の意味を込めて、男の体を丁寧に拭いていく。

びしょ濡れの頭も拭いてあげたいけど、男は背が高くて届かない。

私は懸命に背伸びをして手を伸ばした。


すると、それまでされるがままになっていた男の唇の端が、にっと持ち上がった。


雨は通り雨だったようで、すでにパラパラと音が小さくなっていた。


男は懸命に手を伸ばす私の手首を掴むと、

「アヤ、気に入った。
連れて帰るぞ。」

と言った。

は!?
連れて帰る?

私は訳が分からず、首を傾げた。

< 13 / 147 >

この作品をシェア

pagetop