大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
大王は、そのまま床について、丸一日眠り続けた。

私は、冷たい水に晒した手拭いで大王を冷やし続けた。

時折、苦しそうな咳を始めると、なかなか止まらなかった。

隣に床を用意した私は、その度に起きて、大王の背中をさすった。

翌日、ようやく目覚めたが、そのまままた寝ようとするので、慌てて薬湯を用意してもらった。

大王を抱き起こすが、意識が朦朧としているのか、薬を飲んではくれない。

私は自ら薬湯を口に含み、大王の口に流し込んだ。

それからは、全て口移しで飲ませた。

薬湯も重湯(おもゆ)も。

お腹の子も気にはなったが、それよりも大王の体の方が心配だった。

来る日も来る日も、大王は目覚めない。

それでも私は、看病を続けた。

大王は、必ず、お元気になる…

こんな病で、大王がいなくなったりしない…

私は、信じて、祈って、大王の側に寄り添う事しか出来なかった。


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