大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
私が微笑むと、大王は不思議そうな顔をする。

「大切な話?」

「実は…
………やっぱり、大王がもう少しお元気に
なるまで、お楽しみに取っておきますね。」

私は、いたずらを思いついた子供のように笑う。

「なんだ?
気になるではないか!
アヤ、教えてくれ。」

大王は、今にも起き上がろうとする。

「ダメです。
まだ熱が高いんですから、寝ててください。」

私は、大王の肩をそっと押さえて、寝かせた。

「ちゃんと、お話しますから。」

私が言うと、大王は大人しく横になり、私を見上げる。

「実は、稚児(やや)がお腹にいるようなの
です。」

私が言うと、大王はまた起き上がろうとした。

「ダメです。
寝ててくださいと申し上げたはずです。」
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