大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
せめてもの救いは、私が嫁ぐ相手が、ハヤだという事。

ハヤは、里長(さとおさ)の2番目の息子で、私よりひとつ上の17歳。

幼い頃から一緒に野山を駆け回った気心の知れた相手だ。

2年程前から急に背が伸びて、ちょっと前まで私と並んでいた背丈が、私より頭ひとつ分以上大きくなった。

雄々しく凛々しく成長したハヤとなら、きっといい夫婦(めおと)になれる。


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空が黄昏れ始めると、機織りはできない。

美しい織りは、繊細な技によりもたらされるのだ。

私は母と片付けをして、機織り小屋を後にする。

「アヤ!」

声と共に、ハヤが駆けてくる。

「先に帰ってるわね。」

そう告げた母に頷くと、母は去っていった。

ハヤの右手には仕留めたばかりだと思われる兎。

「これ、アヤに。
今から、お前んとこで捌いてやるよ。
それから、こっちも。」

と反対の手に握られていた花を差し出す。

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