大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「いえ、そのようなことは…」

私が消え入りそうな声で答えると、

「このように耳まで赤くしておいて、否定する
とは、まるで恋の手練れのようだな。
俺の方がどんどん愛しさを増していくでは
ないか。」

そう囁いた大王は、そのまま私の耳に口づけた。

「キャッ」

驚いた私は、小さく声を上げて、肩を竦める。

「くくっ
アヤは、男を惑わすのが上手いな。
これ以上こうしていると、抑えが利かなく
なりそうだ。」

そう言うと、大王は私の肩を離した。

だけど、元の場所には戻らず、私の隣に座ったまま。

仕方なく、私は隣を気にしながらも食事を続けた。

昨日、1人で食べた夕餉も味気なかったが、今日も味なんて全然分からない。

ハヤとだったら、楽しくおいしく食事ができるのに…
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