大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
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次の日から、私は針子に仕立てを習った。

最初から絹は勿体ないから、麻で練習をしたいと言ったが、聞き入れてもらえなかった。

麻を縫う角針とは違い、絹は鉄の針を使うから、麻で練習するのはあまり意味がないらしい。

鉄の針なんて、見るのも触るのも初めて。

小さな穴に絹糸を通して使う。

早くは縫えないが、ひと針ずつ丁寧に縫っていく。

だけど、鉄の針は、うっかり指を指すととても痛い。

せっかくの絹に血を付けないよう、慎重に縫い進める。

1日かけてもそれ程縫い進める事はできない。

なのに、指先は自分でも痛々しくなるほどの刺し傷だらけ。

それでも、できる仕事があるのは嬉しかった。

機織りではなくても、何かを作り上げるのは楽しい。

昨日とは違い、今日は時が経つのがあっという間だった。
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