大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
夕暮れになり、針仕事の道具を片付けると、夕餉が運ばれて来た。

また2膳。

だけど今日は、大王はなかなか姿を現さない。

どうしよう…
先に食べる?
それはダメだよね?
待つべき?
いつまで?

冷めていく料理を見ながら、自問自答する。

しばらくして、ようやく大王が現れた。

「アヤ、遅くなってすまない。」

「大王!」

大王の顔を見ると、なぜか嬉しくなって自ずと顔が綻ぶのを感じた。

「アヤの笑顔を初めて見た…」

大王は膳の前には座らず、まっすぐ私の隣に来て膝をついた。

私は訳が分からず、きょとんと隣の大王を見る。

「アヤ、もう一度笑ってくれ。」

大王は私の手を取って言うが、笑えと言われて笑える程、私は器用ではない。
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