大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
私の手から口を離した大王は、火照りを抑えられない私の頬に大きな手を添えた。

「あの…」

大王に見つめられ、目を逸らしたいのに、頬を触られているため、逸らせない。

そっと手を添えられているだけなのに…

私が困っていると、大王の顔が近づいて来た。

そして、そのまま…



私の胸は、壊れそうなほど、ドキドキと大きな音で跳ね続ける。

永遠のように感じる長い時の後、私の唇から大王が離れていった。


すると、私の頬をなぜか涙が伝う。

大王は驚いたように私を見つめて、

「そんなに俺が嫌いか?」

と苦しそうな声で尋ねた。

私は黙って首を横に振った。

「では、なぜ泣く?」

「分かりません。
ただ、苦しくて。
大王に触れられると、いつも心臓が
早鐘のように鳴り響いて暴れるので、苦しくて
どうしていいか分からなくて…」
< 35 / 147 >

この作品をシェア

pagetop