大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「綺麗。オダマキね。」

私が答えると、

「アヤに似合うと思って。」

そう言って、兎を地べたに置くと、汚れた手を衣(ころも)で拭って私の結った髪に青いオダマキの花を挿してくれた。

「ほら!
やっぱり綺麗だ。」

ハヤは、目を細めて笑う。

私だって、褒められれば嬉しい。

「ありがとう。」

お礼を言って、ハヤの隣に並んだ。

私は、兎を拾い上げたハヤと共に、機織り小屋の隣の我が家へと向かった。

家の裏手で、ハヤは腰に下げた袋から取り出した石包丁を使い、器用に兎を捌いていく。

私は母と芋や菜を刻んで羹(あつもの、汁物の意)を作る。

ハヤから受け取った兎を軽く炙ってから汁の中に入れると、辺りにはいい匂いが立ち込めた。

「ハヤ、一緒に食べてって。」

私が言うと、

「いいのか?」

と、ハヤ。

「もちろん。」

私が答えると、

「ありがとう。」

と、ハヤは嬉しそうに笑う。
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