大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
楽しく食事を終えると、私は、家に帰るハヤと共に夜道を歩く。
今日は、雲ひとつない十三夜。
松(松明(たいまつ)の意)が無くても、そこはかとなく明るい。
「ハヤ、いつもありがとう。」
ぽつりぽつりと会話をしながら歩いていると、月明かりを遮る木立ちの陰で、ハヤは突然、私の手を握った。
「ハヤ?」
私がハヤを見上げると、足を止めたハヤは、私の手を引き寄せる。
「アヤ…」
気づけば私は、私の名を呼ぶハヤの腕の中にいた。
「ハヤ、どうしたの?」
私が声を掛けるも、ハヤは無言で、腕を緩める気配は一向にない。
私が、どうしたものかと考えあぐねていると、ハヤが口を開いた。
「俺はアヤが好きだ。
アヤが愛しいと思う。
早くアヤと一緒になりたい。」
それを聞いて、私は思わず、笑みをこぼした。
「私も ハヤが好きよ。
私たち、子供の頃から仲良しだったもの。
だけど、急にどうしたの?」