大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「私はもう…
後は大王がお召し上がりください。」

私が言うと、

「ダメだ。
こんな事を続けていては、
アヤの体がもたない。
ほら、もう少しだけでも。」

大王はもう一切れ口元に持ってくるが、私は力なく首を横に振った。

「本当に私はもう…
おいしいですから、
大王が召し上がってください。」

私が大王に微笑みかけると、大王は私をぎゅっと抱きしめる。

「こんなに細くなって…
日に日に痩せ衰えていくアヤを
ただ見ているしかできないなんて…
お願いだから、アヤ、俺のために
食べてくれ。」

大王の絞り出すような声に胸が苦しくなる。

いつも雄々しく力強く傲慢で尊大で、だけどとても優しいこの人を、私が苦しめている。

「ごめんなさい…」

私の目から涙が溢れた。
< 50 / 147 >

この作品をシェア

pagetop