大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
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それから5日後、私は大王に手を引かれて外へ出た。

大王に抱き上げられ、馬に乗せてもらう。

大王の腕の中で、弾む馬から落ちないよう、しっかりと守られて、桑の里へ向かう。

いくつかの里や村を越え、川を渡り、桑の里へ着いた。


里の入り口で里長が出迎えてくれた。
その隣にハルと…ハヤ!

私はハヤを見て、帰って来た事を実感した。
里に帰れた事が嬉しくて、思わず口を開いた。

「ハヤ、ただいま。」

すると、それまで無表情で頭を下げていたハヤが、一瞬顔を上げて驚いたように目を見開いた。

だが、それだけだった。

ハヤはもう一度頭を下げて、私たちを見送った。

馬上で大王が口を開いた。

「1番右にいた者か?」

「え?」

「アヤの許婚だったのは。」

「………はい。」
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