大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「なんで?」

私が問うと、

「大王からお遣いをいただいたので。」

と母。

私は大王を見上げると、そこには、

「アヤも母の料理なら食べられるのではないか
と思って…」

と、優しく微笑んで私を見つめる瞳があった。

「ありがとう…ございます。」

私は嬉しくて、私の肩を抱き寄せて立つ大王の胸に ことん と頭を預けた。

あんなに苦しかった大王の腕の中が、今はなぜかとても心地いい。

「食べてもいいですか?」

私が大王に尋ねると、

「もちろんだ。たくさん食べろ。」

と言われた。

「ふふっ
たくさんは無理です。
でも、いつもよりは食べられそうな気が
します。」
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