大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
「だから、俺はお前に興味を持った。
お前を呼び寄せて、体を拭いてやった。
その後だ。
アヤが俺の体を拭いてくれたのは。
アヤは小さな体で届かない頭まで拭いて
くれようと一生懸命、背伸びをしていた。
その姿がとてもいじらしかった。
愛しいと思った。
だから、俺はアヤを連れて帰って妃にした。
俺は今でもあの時の大雨に感謝している。」

私を見つめる大王の目がとても優しい。


私の胸の内は、こんなにも醜いのに。

毎夜、私を蔑んだ媛たちを愛しむ大王に、心焼き尽くされそうな思いをしているのに。

そんな醜い私を隠しているのに。


「私のような者をそのように思ってくださり、
感謝しています。」

そう言って、私はお椀を置いた。

「アヤ、もう食べないのか?」

大王が心配そうに私を覗き込む。
< 59 / 147 >

この作品をシェア

pagetop