大王(おおきみ)に求愛された機織り娘
ハヤの腕の中で、私はくすくす笑う。

そんな私を見て、ハヤは複雑な表情を浮かべた。

ハヤは、少し腕を緩めて、私の両肩を掴む。

私は、ハヤが何をしたいのか分からず、首を傾げると、真剣な眼差しをしたハヤの顔が近づいてきた。

「なに?」

私の質問は、それ以上続けられなかった。

私の唇に ハヤのそれが重なっていたから。

私はよく分からないまま、ハヤに口づけられていた。

な…に、これ… ? くち…づけ?

初めてのことに、戸惑いしかない。


私だって、夫婦になればどんなことをするのかくらい、知っている。

初潮が来た時、里で一番長生きの婆さんが教えてくれた。

その時は、そんなことをいずれ夫婦になったハヤとするのかという驚きしかなかった。

けれど、まさか、夫婦になる前にハヤがそんなことをするとは思ってもみなくて…


どれ程の時が経ったのか。

一瞬ではない長い時を感じた後、ハヤの唇は離れていった。

「アヤは、俺のものだよな?
他の誰の所へも嫁に行かないよな?」

ハヤが切迫した表情で問う。

「ハヤ、どうしたの?
今日のハヤ、変だよ?」

私が聞くと、

「兄さんが…」

と苦い顔をする。
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